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何ごとも心がけ次第ですよね。
慶應義塾大学文学部 准教授
平石 界
(ひらいし かい)
Profile — 平石 界
東京大学大学院総合文化研究
科博士課程退学。東京大学,京
都大学,安田女子大学を経て,
2015年4月より現職。博士(学
術)。専門は進化心理学。
春ですね。人の心を読めるようになって大学
生活充実させちゃうぞーと「心理学入門」の教
室をのぞいた大学一年生が錯視の飛び交うOK
GoのMVを見せられて目をグルグルさせる季
節ですね。思っていたのと違う。でも面白い!
となれば担当教員としてはしめたもの。さぁ次
はちょっと考えてみよう。自動車に乗るのと,
飛行機に乗るのと,どっちが怖い? そう,飛
行機怖いよね。でもね,飛行機事故に遭う確率
なんて,車に乗ってて事故に遭う確率よりずっ
と小さいんだよ。人の心なんて当てにならない
もんだろう!? 春は一年のうちでもっとも心理
学者のドヤ顔が見られる季節です。
そうは言われてもやっぱり「心」にはすご
い力もあるって思いたいのが人情ですよね。
AmesさんとFiskeさん(2015),実験参加者
に,看護師がムカつく患者にイタズラで違う薬
を飲ませたという話を,パソコン上で読んでも
らいました。そのせいで患者さんに生じたさ
まざまな健康上の被害(動悸とか血圧急低下
とか)が,一つずつ被害額とともに2秒間画面
に表示されて,最後に質問が出てきます。「さ
て,被害総額はいくらだった?」。正解は4,337
ドルだったのですが,回答の平均は5,224ドル
でした。10万円くらい多い。そんな,いきな
り質問されたら覚えてないよね,間違えちゃう
よねと思うかもしれませんが,錠剤が似ていて
取り違えてしまったというストーリーだと平
均4,557ドルだったわけで,やっぱり「心」の
力はすごい。悪意があれば害も大きい(気がす
る)。著者がFiskeさんで掲載誌がPNASと聞
くと妙な納得感があります。
そ れ で 言 う と,Thomasさ ん ら(2016) の
「子供を一人にしちゃダメ」研究も興味深い。
大人の目が届かないところで一人でいる子供
がどれくらい危険だと思うか尋ねたものです。
「母親が,恋人と会うために,10 ヵ月のオリ
ビアちゃんを涼しい地下駐車場に停めた車内
に15分間置き去りにした」とか「仕事のため
に,自宅から約1マイルはなれた公園で,6才
のジェニーを25分間一人きりにさせた」など,
幾つかの状況があったのですが,ここでポイン
トは母親の「心がけ」。仕事,ボランティア活
動,恋人との逢瀬,ちょっとした息抜き,そう
いう意図があって子供を一人にした場合には,
意図せざるアクシデントで子供が一人きりに
なってしまった場合よりも,子供への危険は大
きいと研究参加者たちは回答しました。自分の
用事を優先して子供を一人にするなんて,そん
な勝手なことは許せない! きっと罰が当たり
ますよ! ってことでしょうか。なぜだかうっ
すら,用があっての時のほうが事前に安全に配
慮する余裕があるんじゃないかって気がするん
ですが,気のせいでしょう。あとなんか,母親
の場合と違って,父親が仕事のために子供を一
人にした場合はあまり危険と思われないって書
いてあったようですけど,それもきっと気のせ
い。
まぁ実際,子供を一人にするのは良くないで
すよ。Thomasさんらによれば年間140万人に
一人の子供が誘拐されるって試算があるそうで
すから,めっちゃ多いじゃないですか。娘が
小さい頃,たとえ家から数分の公園でも,忘れ
物したら必ず一緒に家まで取りに帰ったもので
すが,やっぱり自分は正しかった。え,なに?
利用可能性ヒューリスティクスがどうかしま
したか? あれねぇ,納得感もあるんですけ
ど,恣意的になんでも説明できちゃったりもす
るじゃないですか(Gigerenzer & Gaissmaier,
2011)。ああいう後出しジャンケン的なのは,
ちょっとどうかと思うんですよね。心理学者と
して(ドヤ顔)。